「kintoneを導入すれば業務が楽になると聞くけれど、実際に何がどう変わるのかイメージできない」
「自社のどの業務から手をつければいいのか分からない」
そんな悩みを抱える企業にとって、kintoneを使った業務改善は有力な選択肢です。ノーコードで業務アプリを作れるkintoneは万能に見える一方、自由度が高いぶん「自社の何に使えばよいのか」が見えにくいという声も少なくありません。
本記事では、kintoneによる業務改善を「3つのタイプ」に整理したうえで、業種別のオリジナル事例7選、そして失敗しない導入の5ステップまでを実務目線で網羅的に解説します。読み終えるころには、自社のどの業務から着手すべきかが具体的に見えてくるはずです。
そもそもkintoneとは?業務改善に選ばれる理由
結論から言うと、kintoneは「現場が自分たちで業務改善を進められる」点で他のシステムと一線を画します。サイボウズ社が提供するノーコードの業務プラットフォームで、顧客管理・案件管理・日報・在庫管理といった業務アプリを、プログラミングなしにドラッグ&ドロップで作成できます。まずはこの特徴を押さえておくことが、活用イメージを描く第一歩です。
ノーコードで現場が“自分たちで”改善できる
従来のシステム開発は、要件定義から納品まで数か月かかることも珍しくありませんでした。kintoneなら、現場の担当者自身がその日のうちにアプリを作って試せます。「作って→使って→直す」を高速で繰り返せるため、現場の実態に合った仕組みへ育てていけます。IT専任者がいない中小企業でも、業務改善の主導権を自社で握れる点が支持されています。
情報の一元管理とリアルタイム共有
kintoneに情報を集約すると、個人のPCや部署ごとに散らばっていたデータが1か所にまとまります。誰が入力しても即座に全員へ共有され、外出先のスマートフォンからも確認・入力が可能です。「最新版はどれ?」「あの資料どこ?」といった探しもの・二重管理のムダが消え、これが業務改善の土台になります。
kintoneの業務改善は大きく3タイプ(事例の見取り図)
数多くの活用事例も、突き詰めると3つの改善タイプに分類できます。この見取り図を持っておくと、後述の事例を「自社のどの課題に当てはまるか」で読み解けるようになります。
タイプ①:脱・紙/脱・Excel(転記・二重入力の削減)
紙やExcelで記録し、あとから別の台帳へ転記していた作業を、kintoneへの一度の入力にまとめるパターンです。日報・点検記録・アンケートなど、手書き→転記が発生している業務ほど効果が大きく出ます。
タイプ②:情報の分断解消(散らばった情報の一元化)
顧客情報は営業のExcel、請求は経理のソフト、履歴はメール……と分断された情報を1つのアプリに集約するパターンです。担当者が不在でも状況が分かり、対応の抜け漏れがなくなります。
タイプ③:集計・帳票・通知の自動化
バラバラのデータを自動で集計し、見積書や請求書などの帳票を自動作成したり、期限が近づいたら自動通知したりするパターンです。月末に集中していた集計作業や、記憶に頼っていた期限管理を自動化できます。
💡見取り図の使い方
自社の困りごとが「転記が多い」ならタイプ①、「情報がバラバラ」ならタイプ②、「集計や期限管理が大変」ならタイプ③に当てはめて事例を読むと、打ち手が具体化します。
【業種別】kintoneで業務改善した事例7選
ここからは、業種別に7つの事例を紹介します。各事例が前述の「3タイプ」のどれに当たるかも示すので、自社の課題と重ねながら読んでみてください。
※以下の事例は、実際のkintone導入現場でよくある業務課題をもとに、EDSエンターテインメント(環境デジタルソリューション株式会社)が編集・再構成したものです。特定の企業・団体を示すものではありません。
事例1:建設業:紙の日報をやめ、原価をリアルタイムで見える化
課題:各現場から紙で上がる日報を、経理が月末にExcelへ入力し直して原価を集計。工事ごとの採算が分かるのは月をまたいでからで、赤字現場への気づきが遅れていました。
改善:職人がスマホから直接kintoneの日報アプリに工数・材料費を入力する運用へ変更。工事台帳アプリと紐づけ、入力と同時に現場ごとの原価が自動集計される仕組みを構築しました。
効果:月末に約3日かかっていた集計が半日以下に短縮。現場の採算をリアルタイムで確認でき、赤字化の予兆に早く手を打てるようになりました。
事例2:製造業:属人化したExcel工程表を全員共有の工程管理へ
課題:工程表はベテラン社員のExcelファイルで管理され、更新のたびに口頭やメールで共有。担当者が休むと進捗が誰にも分からず、納期の問い合わせに即答できませんでした。
改善:受注・工程・進捗ステータスをkintoneで一元管理へ移行。図面番号や製品情報はマスタ化して選択入力にし、入力ミスと手戻りを防止しました。
効果:「今どの工程まで進んでいるか」を全員が同じ画面で把握。納期に関する社内問い合わせが大幅に減り、担当者不在でも状況を答えられる体制になりました。
事例3:不動産・サービス業:問い合わせ対応漏れをゼロに
課題:反響(問い合わせ)がメール・電話・Webフォームに分散し、誰がどこまで対応したかが不明。対応の重複や、逆に放置される案件が発生していました。
改善:すべての反響をkintoneの案件管理アプリに集約し、対応状況をステータスで管理。次のアクションと担当者を明確にし、未対応案件が一覧で浮かび上がるようにしました。
効果:対応漏れが実質ゼロに。初動が速くなったことで見込み客を取りこぼさなくなり、成約率の向上にもつながりました。
事例4:卸・小売業:在庫と受発注を一元化し欠品と過剰在庫を解消
課題:在庫はExcel、受発注は電話とFAX。数字がリアルタイムで合わず、欠品による販売機会の損失と、過剰発注による在庫増を繰り返していました。
改善:在庫・受注・発注を一つのkintone環境で連動させ、在庫が基準数を下回ったら通知が届く仕組みを設定。勘に頼っていた発注判断をデータで下せるようにしました。
効果:欠品と過剰在庫の両方が減少。棚卸しの精度も上がり、発注業務にかかる時間そのものも圧縮できました。
事例5:バックオフィス:申請・承認をワークフローで電子化
課題:経費精算や各種申請が紙の回覧。承認者が外出中だと書類が机に滞留し、月末に申請が集中して経理がパンクしていました。
改善:kintoneのプロセス管理(ワークフロー)機能で申請〜承認をオンライン化。誰の承認待ちかが可視化され、スマホからでも承認できるようにしました。
効果:承認の停滞が解消し、差し戻しややり直しも減少。紙の保管・検索の手間がなくなり、テレワーク下でも申請業務が止まらなくなりました。
事例6:医療・介護:記録のクラウド化で情報共有と安心を両立
課題:利用者ごとの記録を紙とExcelで管理。転記に時間を取られ、緊急時に必要な情報をすぐ引き出せないことが課題でした。
改善:タブレットからその場でkintoneに記録を入力する運用へ変更。必要な情報を検索一発で呼び出せるようにし、権限設定で個人情報も適切に保護しました。
効果:毎日の記録作業が短縮され、本来のケア業務に時間を回せるように。情報がリアルタイムに共有され、緊急時の確認もスムーズになりました。
事例7:全社DX:スモールスタートから全社活用へ広げた例
課題:「DXを進めたい」という号令はあるものの、何から着手すべきか定まらず、ツールだけが増えて定着しない状態でした。
改善:まず1部門の日報アプリ1つから開始。効果が見えたところで顧客管理・案件管理へと横展開し、半年ほどで全社が同じ基盤で情報を扱うようになりました。
効果:小さな成功体験を積み上げたことで現場の抵抗感が薄れ、「次はこの業務も」と自発的に改善が広がる文化が生まれました。
【業務・部門別】さらに広がるkintone活用パターン
事例7選でも触れたとおり、kintoneは部門を問わず活用できます。代表的な部門×用途を一覧にまとめました。自社の身近な業務から探してみてください。
| 部門 | 主な用途 | 改善のポイント |
|---|---|---|
| 営業 | 顧客管理・案件管理・商談履歴 | 対応状況を共有し、抜け漏れと属人化を防ぐ |
| 経理 | 請求・経費精算・入金管理 | 転記をなくし、集計と帳票作成を自動化 |
| 総務・人事 | 申請・備品管理・社員名簿 | ワークフロー電子化と権限管理で安全に一元化 |
| 製造・現場製造・現場 | 工程管理・日報・原価管理 | 進捗と数字をリアルタイムで見える化 |
| 顧客対応 | 問い合わせ・クレーム管理 | 履歴を集約し、対応品質とスピードを均一化 |
失敗しない!kintone業務改善を成功させる5ステップ
kintoneは自由度が高いぶん、進め方を誤ると「作ったけれど使われない」状態に陥りがちです。次の5ステップを押さえれば、着実に成果へつなげられます。
STEP1:現状業務の棚卸しと“改善したい1業務”の特定
いきなり全社展開を狙わず、まずは「一番困っている業務を1つだけ」選ぶのが鉄則です。転記が多い・探しものが多い・二重入力が多い、そんな業務が最初の候補になります。
STEP2:スモールスタート(1アプリから小さく始める)
選んだ1業務について、最小限の項目でアプリを作り、まず使ってみます。完璧を目指さず、使いながら直す前提で始めることが定着の近道です。
STEP3:アプリ設計(フィールド設計の考え方)
アプリの使いやすさは「どんな項目(フィールド)を、どの型で用意するか」で決まります。日報アプリを例にした設計の考え方が下表です。
| フィールド名 | フィールドタイプ | 役割・設計のコツ |
|---|---|---|
| 日付 | 日付 | 初期値を今日にして入力の手間を減らす |
| 担当者 | ユーザー選択 | ログインユーザーを自動セットし誤りを防ぐ |
| 現場・案件 | ドロップダウン/関連レコード | マスタから選ばせ表記ゆれをなくす |
| 作業内容 | 文字列(複数行) | 自由記述は最小限にし集計項目と分ける |
| 工数(時間) | 数値 | 後工程での自動集計を見据えて数値型にする |
| ステータス | ラジオボタン | 進捗を選択式にし一覧で絞り込めるようにする |
STEP4:現場を巻き込む運用ルールづくり
「いつ・誰が・何を入力するか」を明確にします。入力の負担を最小化し、入力する意味(自分が楽になる)を現場が実感できると、運用は自然に回り始めます。
STEP5:効果測定と横展開
削減できた時間やミスの減少を振り返り、成果を共有します。1つ目の成功を足がかりに、隣の業務・部門へと広げていくことで、全社の業務改善へと育っていきます。
⚠つまずきやすいポイント
最初から複雑な自動化を盛り込むと、現場が使いこなせず形骸化しがちです。まずはシンプルに作り、運用に乗ってから機能を足しましょう。
よくある失敗パターンと対策
導入がうまくいかないケースには共通点があります。あらかじめ知っておけば、多くは避けられます。
①目的が曖昧なまま作り始める
「kintoneを入れること」自体が目的化すると、使われないアプリが増えます。どの業務のどの困りごとを解消するかを先に決めることで、必要な項目も運用も自ずと定まります。
②アプリが乱立し“野良アプリ”化する
誰でも作れる手軽さの裏返しで、似たアプリが増え管理不能になることがあります。作成・命名のルールと管理担当を決め、定期的に棚卸しをする運用が有効です。
③現場が入力せず形骸化する
入力項目が多すぎる・入力しても現場にメリットがない、が主因です。項目を絞り、入力する人がまず楽になる設計にすることが定着の分かれ目になります。
💡失敗を避けるコツ
これらの失敗は、導入経験のあるパートナーと伴走しながら進めることで、そもそも“つまずかない”状態をつくれます。目的の整理から運用設計まで相談できる相手がいると安心です。
導入前に確認したいチェックリスト
次の項目に3つ以上あてはまれば、kintoneによる業務改善の効果が期待できます。
✅導入前チェックリスト
- 紙やExcelから別の台帳へ「転記」している業務がある
- 同じ情報を複数のファイルやツールに二重入力している
- 「最新版はどれ?」「あの資料どこ?」と探す時間が多い
- 担当者が不在だと、進捗や状況が誰にも分からない
- 月末など特定のタイミングに集計作業が集中している
- 外出先やテレワークから社内の情報を確認しづらい
kintoneの料金プランと業務改善にかかる費用感
kintone本体の料金プランは、ライト・スタンダード・ワイドの3コースに分かれています(2026年7月時点、税抜表示)。プラグインや外部連携を使う場合はスタンダードコース以上が前提となる点に注意しましょう。
| コース | 月額(税抜・1ユーザー) | 最小契約ユーザー数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ライトコース | 1,000円 | 10ユーザー | 基本機能中心。プラグイン・API連携は利用不可 |
| スタンダードコース | 1,800円 | 10ユーザー | プラグイン・API連携が可能。本格活用に推奨 |
| ワイドコース | 3,000円 | 1,000ユーザー | 大規模組織向け。アプリ数・スペース数の上限を拡張 |
初期費用は無料で、30日間の無料お試しも利用できます。料金は改定される可能性があるため、契約前に必ずkintone公式サイトで最新情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1.kintoneは業務改善にどれくらいの期間で効果が出ますか?
対象を1業務に絞ってスモールスタートすれば、数週間〜1か月ほどで最初の効果(転記削減や情報共有の改善)を体感できるケースが多いです。全社的な効果は横展開を進めるにつれて積み上がっていきます。
Q2.ITに詳しくない現場でも使いこなせますか?
kintoneはExcelに近い感覚で入力でき、スマホからも操作できます。入力項目を絞り、選択式を活用するなど設計を工夫すれば、PCが苦手な方でも無理なく使えます。
Q3.ExcelやAccessから移行できますか?
既存のExcelデータはCSVなどで取り込めるため、これまでの蓄積を活かして移行できます。まずは今のExcelの構成をそのままアプリ化するところから始めると、現場も戸惑いにくくなります。
Q4.小規模(10名未満)でも導入できますか?
ライト・スタンダードコースは最小10ユーザーからの契約となるため、10名未満でも10ユーザー分の料金が目安になります。転記や情報共有の課題があれば、少人数でも十分に効果が見込めます。
Q5.自社で作るのと専門会社に依頼するのは、どちらが良いですか?
簡単なアプリは自社で作れますが、複数業務の連携や自動化、定着まで見据えるなら、経験のあるパートナーと伴走する方が失敗を避けやすく、結果的に早く成果が出ます。
Q6.導入後に社内で使われなくなる不安があります。対策は?
「入力する人がまず楽になる」設計と、入力タイミングを決めた運用ルールが定着のカギです。目的の明確化から運用設計まで支援を受けることで、形骸化のリスクを大きく下げられます。
まとめ|事例を“型”で捉えれば、自社の改善が見えてくる
kintoneの業務改善は、
- ①脱・紙/脱・Excel
- ②情報の分断解消
- ③集計・帳票の自動化
という3つのタイプで捉えると、自社の課題に引き寄せて考えられます。成功のポイントは、1業務に絞ってスモールスタートし、現場を巻き込みながら横展開していくこと。この記事の事例と5ステップを、ぜひ自社の一歩目に役立ててください。
とはいえ、「自社の場合はどの業務から?」「設計や定着に不安がある」という段階でつまずく企業も少なくありません。そんなときは、導入から活用・定着までを伴走する専門家に相談しながら進めるのが、遠回りに見えて一番の近道です。