「毎月の請求書作成に時間がかかる」
「Excelでの転記ミスが減らない」
そんな悩みを抱える企業にとって、kintoneを使った請求書管理は有力な選択肢です。ノーコードで顧客情報や売上データを一元管理できるkintoneは、標準機能だけでもかなりの業務改善につながりますが、「請求書そのものをどう発行するか」という部分でつまずく方が少なくありません。
本記事では、kintoneの標準機能でできること・できないことの整理から、4つのアプリを連携させた具体的な作成手順、インボイス制度・電子帳簿保存法への対応、おすすめのプラグイン比較、そして導入時に陥りがちな失敗パターンとチェックリストまで、実務目線で網羅的に解説します。
目次
- 1 kintoneで請求書管理はできる?できること・できないことを整理
- 2 kintoneの請求書管理に必要な4つのアプリ構成
- 3 kintoneで請求書アプリを作る手順【ステップ解説】
- 4 インボイス制度・電子帳簿保存法への対応ポイント
- 5 請求書管理を効率化するおすすめプラグイン・連携サービス
- 6 kintoneで請求書管理を刷新した企業の取り組み(イメージ事例)
- 7 kintoneで請求書管理を導入する際によくある失敗パターンと対策
- 8 導入前に確認したいチェックリスト
- 9 kintoneの料金プランと請求書管理にかかる費用感
- 10 よくある質問(FAQ)
- 11 まとめ|kintoneの請求書管理は「型」を作れば属人化を防げる
kintoneで請求書管理はできる?できること・できないことを整理
結論から言うと、kintoneは請求書の「元データ管理」と「集計」には非常に強い一方で、「見栄えの良い帳票としての出力」や「メール送信の自動化」は標準機能だけでは対応できません。まずはこの境界線を正しく理解しておくことが、導入設計を誤らないための第一歩です。
kintone標準機能でできること
- データの一元管理
顧客情報・売上明細・入金記録・請求情報をアプリごとに登録し、関連付けて管理できる - ルックアップによる自動反映
顧客管理アプリの情報を請求管理アプリに自動で呼び出せるため、二重入力を防げる - 一覧・絞り込み・グラフ表示
請求ステータスや月次の請求額を一覧化し、未請求・未入金を可視化できる - 変更履歴の自動保存
レコードの編集履歴が自動的に記録されるため、金額変更の経緯を追跡できる - プロセス管理
スタンダードコース以上であれば、請求書発行の承認フローをステータス管理できる
kintone標準機能だけでは難しいこと
⚠標準機能の限界
- 決まったフォーマット(自社指定・取引先指定)でのPDF帳票出力はできない
- レコード内容をそのまま印刷する形になるため、請求書らしい見た目にするには工夫が必要
- 作成した請求書をメールで自動送信する機能は標準では搭載されていない
- インボイス制度・電子帳簿保存法が求める要件(登録番号表示、税率区分、保存要件など)は、フィールド設計を自分で作り込む必要がある
つまり、「データの管理・集計」はkintoneの標準機能で完結できますが、「請求書という書類の体裁を整えて発行・送付する」部分は、プラグインや外部連携サービスと組み合わせるのが現実的です。この住み分けを理解しておくと、導入前の要件整理がスムーズになります。
kintoneの請求書管理に必要な4つのアプリ構成
kintoneで請求書管理の仕組みを作る場合、「顧客管理」「売上管理」「入金管理」「請求管理」の4つのアプリを連携させる構成が基本パターンです。それぞれの役割を理解しておくと、後工程のアプリ作成がスムーズに進みます。
| アプリ名 | 役割 | 主な入力項目 |
|---|---|---|
| ①顧客管理アプリ | 請求先の基本情報と締め日を管理するマスタ | 会社名、住所、担当者、締め日区分、インボイス登録番号 |
| ②売上管理アプリ | 日々の売上・取引内容を記録 | 取引日、顧客(ルックアップ)、品目、数量、単価、金額 |
| ③入金管理アプリ | 入金日・入金額を記録し、未収を可視化 | 入金日、顧客(ルックアップ)、入金額、消込ステータス |
| ④請求管理アプリ | 売上・入金情報を集計し請求書のもとになる情報をまとめる | 対象期間、顧客、請求金額(集計)、入金状況、請求書発行日 |
💡設計のポイント
- 顧客管理アプリの「会社名」だけで顧客を紐づけると同名の取引先で重複が起きやすいため、会社番号など重複しない項目を作ってルックアップの対象にする
- 締め日が顧客ごとに異なる場合は、顧客管理アプリに締め日区分のフィールドを用意し、他アプリから参照できるようにしておく
kintoneで請求書アプリを作る手順【ステップ解説】
ここからは、実際にkintoneで4つのアプリを作成し、連携させていく手順を解説します。各ステップでつまずきやすいポイントも併せて紹介します。
Step1:顧客管理アプリの作成
まず顧客管理アプリを作成し、請求先となる会社の基本情報を登録します。会社名・住所・担当者名に加え、締め日区分とインボイス制度対応のための登録番号フィールドも用意しておきましょう。
| フィールド名 | フィールドタイプ | 備考 |
|---|---|---|
| 会社番号 | 文字列(1行) | 重複禁止設定にしてルックアップの参照キーにする |
| 会社名 | 文字列(1行) | ― |
| 住所 | 文字列(1行) | 請求書送付先として利用 |
| 締め日区分 | ドロップダウン | 例:末締め/15日締めなど |
| インボイス登録番号 | 文字列(1行) | T+13桁の数字。適格請求書発行事業者の場合のみ |
Step2:売上管理アプリの作成
日々の売上・取引内容を記録するアプリです。ここで登録した明細が、後ほど請求管理アプリに集計されます。取引先はルックアップで顧客管理アプリから参照し、入力の手間と表記ゆれを防ぎます。
Step3:入金管理アプリの作成
入金日・入金額を記録し、売上との差分(未収金)を把握するためのアプリです。顧客情報をルックアップで紐づけ、入金消込のステータス(未消込/消込済)を管理するフィールドを用意すると、請求管理アプリ側での判定がしやすくなります。
Step4:請求管理アプリの作成と集計設定
最後に請求管理アプリを作成します。対象顧客と締め区分・集計期間を選択すると、売上管理アプリと入金管理アプリのデータを参照して請求金額を算出できるようにするのが理想的な設計です。
⚠運用上の注意
- 請求書を発行した後に売上・入金アプリのレコードが編集されると、請求額と実績にズレが生じる恐れがある
- 対策として、請求書作成済みのレコードには編集権限を制限する運用ルールを設けるのが望ましい
- 締めが完了した期間に新しい伝票が追加されるケースも起こり得るため、運用ルールとあわせてチェック体制を整えておく
インボイス制度・電子帳簿保存法への対応ポイント
2023年10月に始まったインボイス制度、そして電子帳簿保存法の要件は、kintoneで請求書管理を設計する際に必ず押さえておくべきポイントです。
適格請求書に必要な記載事項
- 適格請求書発行事業者の氏名・名称
- 登録番号(T+13桁の数字)
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名・名称
これらの項目は、請求管理アプリに登録番号フィールド・税率区分フィールド・税率ごとの集計フィールドを用意することで対応できます。特に軽減税率対象品目が混在する場合は、売上管理アプリの明細(テーブルフィールド)側で税率区分を選択できるようにしておくとよいでしょう。
電子帳簿保存法への対応
電子帳簿保存法では、電子的に授受した請求書等について「真実性の確保」と「可視性の確保」が求められます。kintoneでは、レコードの変更履歴が自動保存される点や、日付・取引先・金額での検索性が標準機能で確保できる点が強みですが、タイムスタンプの付与など一部の要件は外部サービスとの連携が必要になるケースがあります。自社の運用が対応すべき保存区分(電子取引データ保存など)に該当するかどうかは、国税庁の公表資料や顧問税理士への確認をおすすめします。
請求書管理を効率化するおすすめプラグイン・連携サービス
標準機能だけでは「決まったフォーマットでのPDF出力」や「メール自動送信」に対応できないため、多くの企業がプラグインや連携サービスを併用しています。選定の際は、料金だけでなく出力形式・自動送信の可否・kintoneのコース要件を確認しましょう。
帳票出力プラグインの選び方
kintoneの拡張機能ストアには、レコードの情報をもとに任意のレイアウトで帳票を出力できるプラグインが複数登録されています。代表的なものとして、無料で使える「請求書作成プラグイン」(複数アプリのデータを統合して出力)や、有料の帳票発行サービス「PrintCreator(プリントクリエイター)」(トヨクモ株式会社)などがあります。PrintCreatorはkintoneスタンダードコース以上での利用が必要で、30日間の無料お試し期間が用意されています。正式な料金プランは変更される可能性があるため、契約前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
メール自動送信・入金消込ができる連携サービス
請求書の発行だけでなく送付まで自動化したい場合は、kintoneに登録されたメールアドレス宛に自動送信を行う「kMailer」のような連携サービスの活用が有効です。また、BtoBプラットフォーム請求書のような外部の請求書発行・受領サービスと連携すれば、電子発行・郵送代行・入金消込までを一気通貫でカバーできます。いずれのサービスも、料金体系や無料トライアルの有無は変更されることがあるため、導入前に公式サイトで最新の料金・利用条件を確認することを強くおすすめします。
⚠プラグイン選定時の注意
- プラグインの多くはkintoneスタンダードコース以上が前提条件になっている
- 料金は改定される可能性があるため、契約直前に必ず公式サイトで最新情報を確認する
- 複数のプラグインを組み合わせる場合、月額費用が積み上がりやすいため、自社に本当に必要な機能から段階的に導入するのが安全
kintoneで請求書管理を刷新した企業の取り組み(イメージ事例)
※以下の事例は、実際のkintone導入現場でよくある業務課題をもとに、EDSエンターテインメント(環境デジタルソリューション株式会社)が編集・再構成したものです。特定の企業・団体を示すものではありません。
設備工事業A社(従業員25名)のケース
A社では、現場ごとの売上をExcelで管理し、月末に経理担当者が手作業で請求書を作成していました。取引先が50社を超えたあたりから、転記ミスによる金額の誤りや、締め日の管理漏れによる請求遅れが頻発するようになっていました。
kintoneで顧客管理・売上管理・入金管理・請求管理の4アプリを構築し、ルックアップで各データを自動連携する仕組みに切り替えたところ、請求データの集計にかかる作業時間が大幅に短縮されました。あわせて、未入金の顧客を一覧画面から即座に確認できるようになったことで、督促対応のスピードも向上しています。
士業事務所B社(従業員8名)のケース
顧問先ごとに請求タイミングが異なるB社では、担当者の記憶や手帳に頼った請求管理が属人化していました。担当者が不在の際に請求漏れが起きるリスクが課題となっていたため、顧客管理アプリに締め日・請求サイクルを登録し、請求管理アプリの一覧をチームで共有する運用に変更しました。
その結果、特定の担当者に依存しない請求管理体制が実現し、繁忙期でも複数人でカバーし合える運用へと改善されました。
kintoneで請求書管理を導入する際によくある失敗パターンと対策
①ルックアップの重複禁止設定を忘れる
顧客管理アプリの参照キーに重複禁止の設定を忘れると、同名の取引先がある場合にルックアップが正しく機能しません。会社番号など一意になる項目を必ず作成し、その項目を重複禁止に設定した上でルックアップの対象にしましょう。
②締め日ロジックを考慮せず金額がずれる
締め日をまたぐ取引の扱いを事前に決めておかないと、集計期間の設定次第で請求額に過不足が生じます。顧客ごとの締め日区分を管理し、集計対象期間を締め日区分に応じて自動計算する設計にしておくと、月次処理での手戻りを防げます。
③権限設定が甘く、確定後のデータが編集されてしまう
請求書を発行した後に売上・入金データが編集されると、請求額と実績の間にズレが生じます。請求確定後のレコードには編集権限を制限する運用ルールを設け、経理担当者のみが例外的に編集できる体制にしておくことが望ましいです。
導入前に確認したいチェックリスト
✅導入前チェックリスト
- 顧客管理アプリの参照キー(会社番号など)に重複禁止設定をしているか
- 顧客ごとの締め日区分を管理する仕組みを用意しているか
- インボイス制度に必要な登録番号・税率区分のフィールドを用意しているか
- 帳票出力・メール送信の自動化に必要なプラグインの利用条件(コース要件)を確認したか
- 請求確定後のレコード編集権限を制限する運用ルールを決めているか
- 電子帳簿保存法の保存要件(検索性・可視性)を満たす運用になっているか
kintoneの料金プランと請求書管理にかかる費用感
kintone本体の料金プランは、ライト・スタンダード・ワイドの3コースに分かれています(2026年7月時点、税抜表示)。
プラグインを利用する場合はスタンダードコース以上が前提となる点に注意しましょう。
| コース | 月額(税抜・1ユーザー) | 最小契約ユーザー数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ライトコース | 1,000円 | 10ユーザー | 基本機能中心。プラグイン・API連携は利用不可 |
| スタンダードコース | 1,800円 | 10ユーザー | プラグイン・API連携が利用可能。請求書管理アプリの本格運用に推奨 |
| ワイドコース | 3,000円 | 1,000ユーザー | 大規模組織向け。アプリ数・スペース数の上限が拡張 |
請求書管理でプラグインを活用する場合はスタンダードコース以上が前提となるため、ライトコースのみで完結できるのは「標準機能だけで請求データを一元管理する」範囲にとどまる点を踏まえて検討しましょう。料金は改定される可能性があるため、契約前に必ずkintone公式サイトで最新情報をご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q1.kintoneだけで請求書を完結できますか?
データの登録・集計・履歴管理は標準機能で完結できますが、指定フォーマットでのPDF帳票出力やメール自動送信には、プラグインまたは外部連携サービスの併用が必要です。
Q2.Excelでの請求書管理と比べてどちらが良いですか?
取引先数が少なく、担当者が限られている場合はExcelでも運用可能です。ただし取引先が増えるほど、転記ミスや請求漏れのリスクが高まるため、複数人での運用や締め日管理が必要になった段階でkintoneへの移行を検討する価値があります。
Q3.個人事業主や小規模事業者でも導入できますか?
kintoneは最小契約ユーザー数がライト・スタンダードコースとも10ユーザーからのため、少人数での利用にはやや割高に感じる場合があります。取引先数が少ない場合は、まず標準機能の範囲で運用し、業務量の拡大に応じてプラグインを追加する段階的な導入が現実的です。
Q4.インボイス制度に対応した請求書を発行できますか?
登録番号・税率区分・税率ごとの合計額といった必要項目をフィールドとして用意すれば、適格請求書の記載要件を満たす運用が可能です。詳しくは本記事の「インボイス制度・電子帳簿保存法への対応ポイント」をご参照ください。
Q5.導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
4アプリ構成のシンプルな請求書管理であれば、要件整理から運用開始まで数週間程度で構築できるケースが多いです。既存の基幹システムとの連携や複雑な承認フローを含む場合は、要件定義に応じて期間が変動します。
Q6.プラグインを使わずに運用することは可能ですか?
可能です。標準機能の印刷機能でも簡易的な出力はできますが、指定フォーマットでの帳票作成やメール送信の自動化は行えないため、業務量が多い場合は非効率になりやすい点に留意してください。
まとめ|kintoneの請求書管理は「型」を作れば属人化を防げる
kintoneでの請求書管理は、顧客管理・売上管理・入金管理・請求管理の4アプリを連携させる「型」を最初に作ることが成功の鍵です。標準機能でできる範囲とプラグインが必要な範囲を正しく切り分け、インボイス制度・電子帳簿保存法の要件を押さえたフィールド設計を行えば、属人化を防ぎながら請求業務全体を効率化できます。
とはいえ、「どのアプリをどう連携させればよいか分からない」「自社に合ったプラグインの選び方が分からない」という声も少なくありません。そんなときは、専門家に相談しながら進めるのが近道です。